『サピエンス全史』がくれた問い⑦
歴史の教科書だと、この後しばらくしてから、資本主義革命を迎えることになります。ここで私たちの先輩は、今までにない突飛な考えを持つようになりました。それは、
「経済は成長する」
という突飛な思い込みです。
ビジネスは利益を生む。貸したお金は利息がついて帰ってくる。だから投資をする。
今では当然のように思われますが、実は、資本主義という言葉がなかった時代には、今、存在するものがすべてであったというのです。
同じ作業、景色、生活がこれからも脈々と続いていく。何も変わらない。
誰かが儲かったら、誰が損をするという全体のパイの奪い合いはあっても、パイそのものが大きくなるという考えがなかったのです。
ところが資本主義の中では、パイ自体が拡大し、ビジネスは利益を生み、周りも豊かになる、そして社会が発展する、という考えにシフトしていきます。投資家に呼びかけて会社を起こしたり、クラウドファンディングでエンジェルを募集したり。
右肩上がりの経済成長を続けることは、多くの人に恩恵をもたらし、また産業や技術の発展にもつながる結果にもなりました。
ところが、その中で弱体化するものもありました。本で紹介されていたのはコミュニティ。家族の絆。私見で言うなら、静かな時間や内省、自然との一体感。
コーチングをやっていて、多くの方から聞く言葉は「忙しい」です。その状況、私もとてもよくわかります。PCも、携帯もあるから、昔よりも効率的に仕事ができるはずなのに、仕事に追われている。アウトルックはいつでも予定がいっぱい。
これまでの歴史を振りかえってみると、サピエンスは食べ物を求め、生きながらえ、生命をつなぐことを追い求める旅をしてきました。日本ではつい50年前まで続いていた旅です。
今は逆に、食べるためではないが、何かに追われるように生きているという感があります。この「満たされた焦り」が、資本主義以降から派生した産物のように見えてきます。(次回、最終回に続く)