歴史の教科書だと、この後しばらくしてから、資本主義革命を迎えることになります。ここで私たちの先輩は、今までにない突飛な考えを持つようになりました。それは、

「経済は成長する」

という突飛な思い込みです。

ビジネスは利益を生む。貸したお金は利息がついて帰ってくる。だから投資をする。

今では当然のように思われますが、実は、資本主義という言葉がなかった時代には、今、存在するものがすべてであったというのです。

同じ作業、景色、生活がこれからも脈々と続いていく。何も変わらない。

誰かが儲かったら、誰が損をするという全体のパイの奪い合いはあっても、パイそのものが大きくなるという考えがなかったのです。

ところが資本主義の中では、パイ自体が拡大し、ビジネスは利益を生み、周りも豊かになる、そして社会が発展する、という考えにシフトしていきます。投資家に呼びかけて会社を起こしたり、クラウドファンディングでエンジェルを募集したり。

右肩上がりの経済成長を続けることは、多くの人に恩恵をもたらし、また産業や技術の発展にもつながる結果にもなりました。

ところが、その中で弱体化するものもありました。本で紹介されていたのはコミュニティ。家族の絆。私見で言うなら、静かな時間や内省、自然との一体感。

コーチングをやっていて、多くの方から聞く言葉は「忙しい」です。その状況、私もとてもよくわかります。PCも、携帯もあるから、昔よりも効率的に仕事ができるはずなのに、仕事に追われている。アウトルックはいつでも予定がいっぱい。

これまでの歴史を振りかえってみると、サピエンスは食べ物を求め、生きながらえ、生命をつなぐことを追い求める旅をしてきました。日本ではつい50年前まで続いていた旅です。

今は逆に、食べるためではないが、何かに追われるように生きているという感があります。この「満たされた焦り」が、資本主義以降から派生した産物のように見えてきます。(次回、最終回に続く)

この記事を書いた人

保志 和美
米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブコーチ
国際コーチ連盟認定コーチ
国際NLP協会認定NLPトレーナー

☆外資系コンサルティングファーム、メーカー、投資銀行で15年以上の研修の経験を軸に、強みや魅力がいまいち見えてこない方、やっていることに違和感を感じている方にクリアに方向性を見つけるコーチングを提供。その方の優位感覚も使いながら、自信を持って前に進むお手伝いをしています。