学生だった時、私は都内の特許事務所でアルバイトをしていました。

特許事務所とは、お客さん(主に会社)のかわりに特許(発明)とか、

意匠(デザイン)、商標(トレードマーク)、実用新案(アイデア)を申請するところです。

私は書類の整理なんかをしていて、端から仕事の内容を興味深く見ていました。

職場にはひとりの部長さんがいて、この方がまた面白い人だったんですよ。

今でもよく覚えている出来事があります。

ある日、女性社員がきちんとした連絡もなく欠勤しました。

次の日も、そして次の日も…。

あれ?と周りの人たちは思います。

その方がいないと進まない仕事も、当然たまっていきます。

事件の可能性はないようですが、周囲の雰囲気を代弁するとこんな感じ。

「あの人、どうしたのかしら?」

私は整理した書類を部長に手渡すときに声をかけました。

「〇〇さん、どうしたんでしょうか。心配ですね」

その時、部長がぽつりとつぶやいたひとことがこれ。

「うん。でも案外、いいことがあったのかもしれないよ」

イライラした返事かと思いきや、意外な答えが返ってきました。

当時の私はこの反応にびっくりしたことを覚えています。

社会人としてどうなんだ!とか、みんなが心配するじゃないか!

という観点は当然あると思いますが、

その部長さんのユニークなところは、上司と部下を超えた視点も持っていたところ。

二人の間には何か独特の信頼関係があって、

役割以外に「友人である」という視点があったのかもしれません。

数日後、その方は会社に出社してきました。(実際、何があったのか私にはわかりませんでした)

組織の役割という視点だけで相手を見るか、あるいはひとりの個人や友人として相手を見るかで、

接する態度、影響も違ってくるのではないかと今の私には思えてきます。

 

 

 

 

 

 

この記事を書いた人

保志 和美
米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブコーチ
国際コーチ連盟認定コーチ
国際NLP協会認定NLPトレーナー

☆外資系コンサルティングファーム、メーカー、投資銀行で15年以上の研修の経験を軸に、強みや魅力がいまいち見えてこない方、やっていることに違和感を感じている方にクリアに方向性を見つけるコーチングを提供。その方の優位感覚も使いながら、自信を持って前に進むお手伝いをしています。